はじめに
中国発のAIチャットボットアプリ「DeepSeek」が、Apple App StoreおよびGoogle Playでランキングトップに躍り出たことで、世界中の注目を集めている。
その背後には、効率的なAIモデルの開発と、米国の技術制裁を乗り越えた独自の戦略がある。本記事では、DeepSeekの起源から技術的特徴、国際的な影響までを詳しく解説する。
DeepSeekの起源と創業者
DeepSeekは、2023年に中国・杭州で設立されたAI企業である。
創業者の梁文峰(Liang Wenfeng)氏は、浙江大学で情報工学を学び、2015年に定量ヘッジファンド「High-Flyer Capital Management」を共同設立した。
同社はAIを活用した取引戦略で成功を収め、2023年には金融事業とは別にAIツールの研究に特化したラボとしてDeepSeekを設立した。
DeepSeekは、High-Flyerの支援を受けつつ、独自のAIモデルの開発を進めている。
DeepSeekのAIモデルと技術的特徴
DeepSeekは、2023年11月に最初のモデルセットである「DeepSeek Coder」「DeepSeek LLM」「DeepSeek Chat」を発表した。
その後、2024年12月に発表された「DeepSeek-V3」は、6710億パラメータを持つ大規模言語モデルであり、OpenAIのGPT-4やMetaのLlama 3.1に匹敵する性能を示した。
特筆すべきは、その開発コストであり、約600万ドルで開発されたとされ、他の同等のモデルと比べて運用コストがはるかに低い。
さらに、2025年1月には推論能力に特化したモデル「DeepSeek-R1」を発表した。
このモデルは、事実検証を効果的に実行し、物理学、科学、数学といった分野で高い信頼性を持つとされている。
DeepSeekのモデルは、商用利用を認めるパーミッシブライセンスの下で提供されており、Hugging Faceでは500種類以上の派生モデルが作成され、合計250万回以上ダウンロードされている。
国際的な影響と各国の対応
DeepSeekの急速な台頭は、国際的なAI競争に大きな影響を与えている。
2025年1月には、DeepSeekのアプリが米国のiOS App Storeで無料アプリランキング1位を獲得し、Nvidiaの株価が18%下落するなど、市場に大きな衝撃を与えた。
また、米国商務省はDeepSeekの政府機関での使用を禁止し、マイクロソフトも従業員によるDeepSeekの使用を禁止している。
これらの措置は、データセキュリティやプロパガンダへの懸念から来ている。
さらに、イタリア、韓国、オーストラリア、カナダなどの国々も、政府機関でのDeepSeekの使用を禁止する措置を講じている。
これらの国々は、DeepSeekが収集する個人情報の取り扱いや、中国政府の影響を受ける可能性について懸念を示している。
DeepSeekの将来展望
DeepSeekは、低コストで高性能なAIモデルの開発に成功し、国際的なAI競争において注目を集めている。
しかし、中国政府のインターネット規制や、各国の使用禁止措置など、課題も多い。
今後、DeepSeekがどのようにこれらの課題を乗り越え、国際的なAI市場での地位を確立していくのかが注目される。
参考記事を読みたい人はこちら(引用元)
- TechCrunch:「DeepSeek: Everything you need to know about the AI chatbot app」
- Reuters:「Microsoft doesn’t allow its employees to use China’s Deepseek-President」
- MarketWatch:「This man wiped $600 billion off Nvidia’s valuation by marrying quant trading with AI」
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